暮らしの変化

認知症の方は環境の変化に弱いと言われています。今、春の歌では2名の泊まりの方がおります。ふたりとも家に帰りたい。自宅で過ごしたいという気持ちがありますが、それぞれの事情を説明すると「仕方ない」と受け入れようと頑張ってくれます。

お一人は、先月末頃より家族が入院し春の歌の泊まりを利用することになりました。週4回通っていて、対応する職員が同じ顔触れでも泊まるとなれば自宅とは違います。ストレスも感じるでしょうし、落ち着かない様子も見られました。いつも入院した家族を探したり、「黙って人の家に入って寝て、捕まるね」と苦笑いしたり。

入院したご家族からトドック(買い物したものを配達してくれる)が届いているので家の中に入れてほしいと頼まれ、本人と一緒に自宅に戻った際「知らない人の家に勝手に入ってね」と言いながら家に入るので、数日でも自宅を忘れてしまったのかと驚きましたが、居間に座って「あー落ち着く」とポツリ。

今日は入院した家族に面会に行きました。お互いの顔を見て二人とも涙ぐんでおり、こちらもつられそうに😭「いつもご家族のことを探しています。家に帰りたいのを我慢して頑張ってるよ」と本人の様子を家族に伝えました。15分の面会時間はすぐに終わってしまい、二人で手を取り合って別れを惜しんでいました。入院したことを伝えても「聞いてない」といつも言っていましたが、帰りの車中では「会えてよかったよ」とまた泣きそうに。「来週も面会に来よう」と励ましました。

もうお一人は、もともと1人暮らしをされていますが、ご自分の身体機能や天候、道路状況などに合わせて暮らすことが難しくなってきており、出かけて外で転んでいる様子がありましたが、ある日、春の歌の訪問の際、外で転んで動けなくなっているのを発見しました。いつからそうしていたのかわかりませんが、雪が降っていたため服は濡れ体は冷たくなっていました。発見が遅れると命にかかわります。ご家族も自宅で過ごさせてあげたい気持ちと、安全に暮らしてほしいという気持ちで揺れます。どんな暮らしが本人にとっていいのか、たくさんたくさん考えます。答えは見つかりませんが、春の歌で可能な日だけでいいので泊まらせてほしいとの希望。不眠のある方なので、夜の様子も把握するため泊まりを利用することにしました。

初日は「帰りたい、家にいたい」と泣いていました。ご家族がとても心配していることを伝え「夜だけ春の歌に泊まって日中は自宅で過ごしましょう」と提案すると「そうするか」と家族の想いに答えようとされます。家族が本人と話しをした際には、認知症の勉強をしている方なので「環境変わるのかあ」とつぶやいたそうです。認知症の自分の環境が変わることを心配したのかもしれません。

不眠のため、就寝薬がどの程度効くのかを見ていき、ぐっすり眠れるようなら自宅で眠って、訪問回数を増やしてみるのはどうかとご家族と話しをしました。高齢者向けの住宅を申し込んでおり、空いて入居が決まれば次の暮らしの環境に移りますが、今できること、最善と思われることを本人に説明しながらやってみようと思います。

環境の変化に対するストレスは認知症の方でなくとも感じます。そして、認知症の方でも環境の変化に合わせようと頑張れます。混乱はあっても、周りの人が自分を心配してくれていることは感じられます。だから、本人を「認知症だから」と置き去りにせず、忘れてしまっても何度でも説明する大切さを2人から教えてもらいました。